高熱隧道
d0052538_229999.gif昭和初期、日本が戦争への道を歩もうとしている時、
黒部渓谷に発電所を建設するためのトンネルが掘られた。

この本は、多大な犠牲を払って完成したその工事をについて
吉村昭が詳細に調べ上げて書き上げた物語で、
登場人物こそ架空のものであるが、ストーリー自体は
全て実際のエピソードを再現しているらしい。

トンネルの難工事の記録、と聞くと、
昨今ではプロジェクトXのような
苦難と成功、そして感動、、、といった
美談になりそうなキーワードが連想されそうだが、
この物語に関しては、そのような美談は微塵も出てこない。
むしろ、国家的事業のために多大な犠牲を払った人たちへの哀悼の物語とも言える。

ダイナマイトが自然発火するような高温の坑道を掘る人々が
途方もない執念をもって工事を進めている様子を淡々と書かれているが、
むしろ生やさしい表現が使われていない分、迫力がある。

ちなみに、「隧道(ずいどう)」というのは、トンネルの事だが、
他にも"棺を埋めるために、地中を掘り下げて墓穴へ通じる道"という意味も持つ。
300人を超える犠牲者を出した難工事を記録した物語という事もあり、
偶然かもしれないが、非常に意味深なものを感じずにはいられない。
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by climberkitune | 2006-04-28 22:10 | Books
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